Blog

ブログ

Blog

スタッフブログ

【内定取り消しとは?】企業が知るべき正当事由と違法リスク

はじめに

採用活動において「内定取り消し」は、企業の信用や法的責任に直結する重大な問題です。特に新卒採用における一方的な内定取り消しは、裁判や労務トラブルに発展する可能性が高く、慎重な対応が求められます。本記事では、内定取り消しの法的性質や正当事由、違法リスク、そして防止策までをわかりやすく解説します。


1. 内定取り消しとは?基本的な考え方

1-1 内定の法的性質(始期付解約権留保付労働契約)

内定は単なる「採用の約束」ではなく、法律上は「始期付解約権留保付労働契約」とされます。これは、一定の条件(卒業・健康状態など)を満たすことを前提に、労働契約が成立しているという意味です。したがって、内定を取り消すには契約解消に相当する正当な理由が必要となります。

1-2 内定と採用内示の違い

「内定」と「採用内示」は混同されがちですが、法的効果は大きく異なります。採用内示はあくまで「採用予定」の通知であり、契約関係は発生していません。一方、内定通知は労働契約の成立を意味します。そのため、内示の取消しは法的拘束力を伴いませんが、内定取り消しは慎重な判断が求められます。


2. 内定取り消しが認められる正当事由

2-1 学歴や資格の虚偽申告

応募時に学歴や資格を偽っていた場合、採用条件を満たさないため正当な内定取り消し理由となります。企業が求めるスキルや要件を満たしていなければ、契約成立の前提が崩れるためです。証拠を確保し、公平性を保つことが重要です。

2-2 健康状態や重大な非行による不適格性

就業に著しく支障をきたす健康状態や、暴力・窃盗など重大な非行行為が発覚した場合も内定取り消しが認められることがあります。ただし、健康上の理由については合理性や差別禁止の観点から慎重に判断する必要があります。不当な差別につながらない配慮が不可欠です。


3. 違法となる内定取り消しのケース

3-1 経営不振を理由とする一方的取消し

「業績悪化」を理由にした一方的な内定取り消しは、原則として違法とされます。経営状況は企業側の都合であり、労働者に責任を転嫁することはできません。どうしても人員調整が必要な場合は、雇用調整助成金の活用など別の方法を検討すべきです。

3-2 不十分な調査や合理性を欠く判断

「不向きそうだ」「印象が悪い」といった曖昧な理由での取消しは違法性が高い行為です。判断には客観的で合理的な根拠が求められます。労働契約解消に相当するため、解雇と同様の厳格な基準で判断される点を押さえておく必要があります。


4. 内定取り消しで企業が負うリスク

4-1 損害賠償・慰謝料の発生可能性

違法な内定取り消しを行った場合、労働者は逸失利益や精神的苦痛を理由に損害賠償を請求できます。特に新卒者の場合、他の就職機会を失っているため高額の慰謝料が認められることもあります。金銭的リスクは決して軽視できません。

4-2 企業イメージ・採用ブランドの失墜

内定取り消しが社会問題化すると、企業の評判は一気に低下します。SNSや口コミで拡散されれば、翌年以降の採用活動にも悪影響を与えかねません。長期的に優秀な人材確保を行うためにも、企業ブランドを守る観点から軽率な取消しは避けるべきです。


5. 内定取り消しを防ぐための企業の対策

5-1 採用選考段階での適正な見極め

内定取り消しを防ぐには、選考段階での適正なスクリーニングが不可欠です。応募書類の厳格な確認、複数回の面接、適性検査の実施などにより、内定後の不一致を減らすことができます。採用フローを見直すことがリスク軽減に直結します。

5-2 内定通知書や就業規則での明確化

内定通知書には、内定取消しが可能となる条件を明記しておくことが重要です。さらに、就業規則にも採用取消しの事由を規定しておくことで、法的リスクを軽減できます。透明性を高め、労使双方にとって納得感のある仕組みづくりを意識しましょう。


まとめ

内定取り消しは企業にとって大きなリスクを伴う行為であり、正当事由がなければ違法と判断される可能性が高いです。採用段階での適正な選考や、通知書・就業規則でのルール整備によってトラブルを未然に防ぐことが重要です。企業ブランドを守るためにも、慎重な対応を心がけましょう。


\採用や労務管理に不安がある企業様へ/

内定取り消しや採用トラブルは、企業の信用に直結する重大なリスクです。社会保険労務士は、採用フローの設計から就業規則の整備、トラブル対応まで幅広くサポートします。
👉 お問い合わせ – 京都府八幡市で労務・法務の相談なら「社会保険労務士法人田原事務所」

SHARE
シェアする

ブログ一覧